買ってきたりんごを、そのまま冷蔵庫に押し込んでいませんか。
どこに置くか、包むべきか、他の野菜と一緒に置いていいのか。迷いだすと切りがありませんよね。
りんごの保存方法は、「温度」「包み方」「一緒に置く相手」の3つでほぼ決まります。
今のやり方が合っているかどうかも、この3点で確かめられます。
この記事で紹介するのは、農研機構やJA、農林水産省といった公的機関・生産者団体が公開している内容だけです。
一方で、家庭で何日もつかという日数は、裏づけとなる情報を確認できなかったため書いていません。
りんごの保存はこの3つで決まる|低温・密閉・同居相手

りんごの保存は、調べるほど情報が増えて迷子になりがちです。
でも押さえるところは「低温」「密閉」「同居相手」の3点だけ。ここさえ分かれば、あとはその応用になります。
1つめは低温。
JA全農長野は、りんごの呼吸作用を抑えるために0℃〜10℃の低温で保存するよう案内しています。どこに置くかという話も、この温度が土台になります。
2つめは密閉。
1個ずつ新聞紙などに包み、ポリ袋に入れて口を閉じる。袋には、りんごの水分が蒸発するのを防ぐ役割があります。
ただし袋は低温と組み合わせて初めて効きます。1つめの低温と必ずセットで考えてくださいね。
3つめが同居相手です。
りんごはエチレンガスを多く出すため、同じ場所に置いた野菜や果物が影響を受けます。
冷蔵庫の中で、りんごの隣に何があるか。それだけで、ほかの食材の鮮度にも関わってくるのね。
では、この3つを順番に見ていきましょう。
【早見フロー】丸ごと?カット後?他の食材と一緒?
順番に見ていく前に、今の状況を早見フローで確かめておきましょう。
たどるのは2つだけ。丸ごとか、カット後か。そして冷蔵庫に何が一緒に入っているか。
flowchart TD
A[りんごを保存する] --> B{カットしてある?}
B -->|丸ごと| C[1個ずつポリ袋に入れて口を閉じる]
C --> D{冷蔵庫に入れられる?}
D -->|入れられる| E[冷蔵庫の野菜室へ]
D -->|入りきらない| F[暑さを避けた場所に置き
入れられる場合は冷蔵庫で保存]
B -->|カット済み| G[切り口を覆って冷蔵]
E --> H{同じ場所に何がある?}
H -->|葉物野菜・キウイ・バナナなど| I[りんごを密閉する
または離して置く]
H -->|じゃがいも| J[芽が出にくくなる
組み合わせとして知られる]
自分に当てはまる枝が見つかれば、やることは1つに絞れます。
丸ごとなら1個ずつポリ袋に入れて口を閉じ、冷蔵庫の野菜室へ。カット後は切り口を覆って冷蔵します。
枝分かれするのは、冷蔵庫に入りきらないときと、同じ場所に置く相手がいるときの2つ。
どちらもこの先で、一次情報にあたりながら順番に開いていきますね。
保存の基本は「低温」|冷蔵庫の野菜室に入れるのが実用的

どこに置くか迷ったときの答えは、はっきりしています。
1個ずつ包んで、冷蔵庫の野菜室へ。JAグループが「とれたて大百科」で案内している方法です。
土台になるのは温度です。
りんごを冷やすのは、呼吸作用を抑えるため。JA全農長野は0℃〜10℃の低温で保存するよう案内しています。ここが出発点です。
ここで「もっと低い温度のほうがいいのでは」と思うかもしれません。
農研機構が公開している最適貯蔵条件は、温度が-1.1〜0℃、相対湿度が90〜95%。
ただしこれは、温度も湿度も精密に管理する業務用の貯蔵条件です。家庭の冷蔵庫のどの室に入れるかという話とは前提が違うので、この数字をそのまま持ち込まないでくださいね。
冷やせば冷やすほどいい、というわけでもありません。
JAグループは冷やしすぎると香りや甘みが活きないと注意を添えています。野菜室へ入れる案内と、あわせて覚えておきたい点です。
冷蔵庫そのものの使い方も、ひとつだけ。
農林水産省は、冷蔵庫の温度は4℃前後が適温だとしています。
あわせて、食品を詰め込みすぎると空気の流れが悪くなり、温度にムラができる原因になるとも案内しています。
なお、この記事では家庭の冷蔵室と野菜室の温度を比べていません。
りんごの保存について、室ごとの温度を比べた一次情報を確認できなかったためです。室の違いそのものは、別の記事で解説しています。

冷蔵庫に入りきらないときは?
箱買いやおすそ分けでの大量入手だと、りんごが一度に10個、20個と増えます。
野菜室にはとても収まりませんよね。
それでも、1個ずつ包むところは変わりません。
青森県りんご対策協議会も、いつもより長く保存したいときの方法として個包装を勧めています。包んだうえで暑さを避けた場所に置き、入る分は冷蔵庫へ。全部を冷やせなくても、包み方と置き場所でできることは残ります。
気になるのは「何日もつのか」ですよね。
ただ、家庭での日数を示した公的な情報は見つけられませんでした。確認できないものは書かない、という方針です。日数を言い切る情報に出会ったら、その根拠を一度確かめてみてください。
1個ずつポリ袋に入れて口を閉じる|密閉が効く2つの理由

袋に入れる理由は、2つあります。
青森県りんご対策協議会が挙げているのは、りんごの水分蒸発を防ぐことと、りんごから出るエチレンガスの影響が他の野菜や果物に及ぶのを防ぐこと。この2つです。
1つめは、りんご自身のため。
袋に入れずに置けば、りんごの水分は蒸発していきます。ポリ袋に入れて口を閉じ、水分蒸発を防ぎます。
2つめは、まわりのため。
ポリ袋に入れて口を閉じることで、エチレンガスの影響が他の野菜や果物に及ぶのを防ぎます。密閉は、りんごを守るためだけの作業ではないのね。
包み方まで、協議会は具体的に示しています。
一個ずつ新聞紙やキッチンペーパーなどに包んでから、ポリ袋へ。JAグループも薄いポリ袋やラップで1つずつ包む方法を挙げ、新聞紙に包んでからポリ袋に入れると長期保存できるとしています。
袋の目安もあります。
農研機構は、包装に使うフィルムについて厚さ0.03ミリ程度のポリエチレン袋が使いやすいとしています。
ただし、袋だけで完結する話ではありません。
農研機構は「フィルム包装は、必ず貯蔵最適温度付近の低温と組み合わせてください」と添えています。包んで、閉じて、そのうえで低温の場所へ。ここまでがひと続きです。
りんごはエチレンが「極多」|一緒に置くと困る野菜・助かる野菜

りんごの保存で考えるのは、りんご自身のことだけではありません。
同じ場所に何を置くかで、まわりの鮮度も変わります。りんごを保存するときに見落とせない点です。
農研機構が公開している「青果物の最適貯蔵条件」には、青果物ごとにエチレンの出やすさを示す区分があります。
そこでりんごはエチレン生成量が「極多」に分類されています。
同じ表に、もうひとつ並んでいる区分。
それが、エチレンの影響をどれくらい受けやすいかを示す「感受性」です。
農研機構は、エチレン生成量の多いものと感受性の高いものを一緒に貯蔵しないよう気をつければ、新鮮さを長持ちさせられると案内しています。
出す側と、受け取る側。この2つを離しておく、という考え方なのね。
りんごの隣を決めるときの物差しも、そのまま2つになります。
エチレンをどれだけ出すか。そして、エチレンにどれだけ弱いか。
この2つが分かると、困る相手と助かる相手を分けて考えられます。
おもしろいのは、りんご自身も感受性が「高」に分類されている点です。
りんごは出す側であり、受ける側でもある。1個ずつ包むことには、その両方の意味がありました。
一緒に置くと影響を受けやすい野菜・果物
では、感受性が「高」に分類されているのは何なのか。
農研機構の表には、こんな品目が並びます。
- 野菜: ホウレンソウ、ブロッコリー、レタス、キャベツ、キュウリ、ニンジン、ネギ、カリフラワー、シュンギク、パセリ、トマト(緑熟)、スイカ
- 果物: キウイフルーツ、バナナ、カキ、洋ナシ
この一覧は、りんごを悪者にするためのものではありません。
生成量の多いものと感受性の高いものを、離して考えるための目安です。
スイカも、この区分に入っている品目のひとつ。
保存の仕方は別の記事にまとめました。

果物の保存では、メロンについても書いています。

品目の多さに身構えてしまいますが、やることが増えるわけではありません。
りんごを密閉するか、離して置くか。選ぶのはこの2つのどちらかです。
離して置く、というのは、同じところにまとめて入れないということ。
農研機構の「一緒に貯蔵しない」を、冷蔵庫の中に置き換えるとこうなります。
じゃがいもと一緒に置くと芽が出にくくなる
エチレンは、困る側の話だけではありません。
じゃがいもについては、りんごと一緒に保存するとエチレンガスの作用で芽が出にくくなると、JAグループが案内しています。
エチレンを多く出すという性質が、ここではプラスに働きます。
同じページには、じゃがいも側の保存の仕方も添えられています。
新聞紙などに包み、通気性のいい冷暗所か野菜室で保存する、という内容です。
最後に、ひとつだけ整理しておきます。
じゃがいもの発芽を抑えることを狙った置き方と、りんごを包んで他の野菜や果物への影響を抑える保存は、目的が違います。
この2つが同時に成り立つかどうかは、確かめられる一次情報がなかったため、本記事では断定しません。
保存できる期間は「条件つき」でしか言えない
先にお伝えしておきます。
この記事では、家庭でどれくらいもつかという目安を示しません。家庭用の冷蔵庫を前提にした期間を示す一次情報を、確認できなかったからです。
数字がまったくないわけではありません。
農研機構の「青果物の最適貯蔵条件」には、りんごの貯蔵可能期間が載っています。ただし、温度と湿度がいつもセットです。
| 農研機構が示す貯蔵条件 | 温度・湿度 | 貯蔵可能期間 |
|---|---|---|
| 低温障害なし | -1.1〜0℃ / 相対湿度90〜95% | 3〜6月 |
| 低温障害あり | 4℃ / 相対湿度90〜95% | 1〜2月 |
これは管理された貯蔵条件での数字です。
同じページに、家庭で貯蔵するとこの期間より短くなると農研機構自身が注記しています。温度と湿度の制御精度が十分ではないから、という理由つきで。
青森県産業技術センターも同じ立場です。
資料の中の「普通冷蔵」は温度0℃・湿度85〜90%の業務用冷蔵庫での貯蔵を指していて、家庭用冷蔵庫ではこれより短くなると明記されています。
もうひとつ、ややこしくしている事情があります。
農研機構は品種や栽培時期によっても貯蔵期間は異なるとしていて、青森県産業技術センターは品種別に「おいしく食べられる時期」を公開しています。りんごとひとくくりにして日持ちを語れない理由が、ここにもありました。
では、この条件つきの数字は何のために見るのか。
条件の書かれていない日数を鵜呑みにしないためです。
カットしたりんごの保存|切り口を覆う

カット後にやることは、1つだけです。
切り口を覆う。まず押さえるのは、ここです。
JA全農長野が案内しているのは、切り口に濡れたキッチンペーパーやラップを貼るという方法。
そうしておけば「しばらくは風味が落ちないでしょう」と書かれています。
なぜ覆うのか。
農林水産省の「消費者の部屋」に、理由がありました。皮をむくと、りんごの果肉に含まれるタンニンなどが空気にふれることで、酸化が進んで褐色の物質に変化する。あの色の変化は、こういう仕組みだったのね。
つまり、覆う目的は空気に触れさせないこと。
どちらも、切り口を覆うための方法です。
ここで、塩水やレモン汁を思い浮かべた方もいるはず。
濃度・分量・浸す時間まで示した一次情報を確認できませんでした。ですので本記事では、分量も時間も書きません。
代わりに、農林水産省が紹介している方法をひとつ。
色が変わってしまったりんごは、果汁100%のオレンジジュースに約10分間ひたしておくと、きれいな色に戻ります、という内容です。
ただしこれは、防ぐ方法ではなく、戻す方法。
覆うのは変わる前、オレンジジュースは変わったあと。使いどころが違います。
りんごの保存でよくある質問
最後に、迷いやすいところをまとめますね。
Q. 冷蔵室と野菜室、どちらに入れるべき?
JAグループが案内しているのは、1個ずつ包んで冷蔵庫の野菜室へという方法。冷やしすぎには注意、とあります。
家庭の冷蔵室と野菜室を比べた一次情報はなく、どちらでもよいとは書けません。
Q. 袋に入れず、そのまま冷蔵庫に入れてもいい?
袋に入れて口を閉じてください。
青森県りんご対策協議会が挙げる理由は、水分の蒸発を防ぐことと、エチレンガスの影響が他の野菜や果物に及ぶのを防ぐこと。
Q. 一緒に置かないほうがいい野菜は?
農研機構がエチレン感受性「高」に分類しているのは、ホウレンソウ、ブロッコリー、レタスなどの野菜と、キウイフルーツ、バナナなどの果物です。
Q. じゃがいもと一緒に置くのは本当にいいの?
JAグループは、りんごと一緒に保存するとエチレンガスの作用で芽が出にくくなる、としています。
ただし個包装との両立や置き方までは、確かめられる一次情報がありません。
Q. どのくらい日持ちする?
家庭での日数は、この記事では示しません。
一次情報の数値は業務用の温度・湿度の条件つきで、家庭ではこれより短くなると出典自身が注記しています。
Q. 箱買いしたらどうする?
1個ずつ包んで袋の口を閉じ、低温の場所へ。
冷蔵庫に移す分は詰め込みすぎに注意。空気の流れが悪くなり、温度にムラができます。
まとめ|りんごの保存は「低温・密閉・同居相手」
りんごの保存で見るところは、最後まで3つのままでした。
低温に置く、密閉する、同居相手を選ぶ。迷ったときは、この順に確かめてみてくださいね。
そのうえで、家庭での日数はこの記事では示していません。
一次情報にある数字は、どれも温度と湿度の条件とセットで書かれたものでした。
覚えておきたいのは、日数ではなく条件のほう。
そう考えると、どこに置くかも、隣に何を並べるかも、自分で決められるようになりますよね。
冷蔵室と野菜室で温度がどう違うのかは、別の記事にまとめています。

果物の保存では、メロンの記事もあわせてどうぞ。


