はじめに：お気に入りなのに毛玉ができる…
ウールやカシミヤなどの天然繊維が好きな女性は多いと思います。 ウール関係の記事を書きまくってるのでお察しの方もいるかもしれませんが、私もそのひとりです。ふんわり安心感のある触り心地と、じんわり温めてくれる機能性に魅了されてきたんですよね。 けれど同時に悩まされてきたのが、毛玉問題。 お気に入りのアイテムほど、毛玉ができるたびに胸がキュッと痛みます。
実は私自身、天然繊維にハマってから毛玉が急に気になるようになりました。特に大好きなアルパカの靴下は、たった一日で毛玉まみれになるほど。同じウールでも種類によって毛玉ができやすかったり、できても目立たなかったり…そんな違いがあるように感じて、このテーマを深掘りすることにしました。
この記事では、毛玉の仕組みの“意外な真実”をわかりやすく紹介しながら、毛玉になりにくい素材ランキングをまとめていきます。素材選びのポイントや、日常のケアで毛玉を減らす方法も紹介していますので、ぜひ参考にしてくださいね。
意外と知らない「毛玉の真実」
実は、毛玉ができにくい素材と、毛玉ができても目立ちにくい素材は別ものです。
これらは似ているようで性質がまったく異なり、理解しておくと服選びの失敗がぐっと減ります。
毛玉ができにくい素材は“そもそも毛玉が発生しにくい構造”をしており、一方で目立ちにくい素材は“毛玉ができても表面に馴染んで悪目立ちしない”という特徴があります。
この違いを知っておくことで、見た目の綺麗さだけでなく、購入後の扱いやすさまで想像できるようになり、服選びはぐっと楽になります。
毛玉の正体は「繊維の絡まり」
毛玉は、繊維の端が摩擦によって飛び出し、絡まり合うことで生まれます。
この“摩擦”は、日常のあらゆる動作の中で起きています。腕を振る、バッグを持つ、椅子に座る——どれもが小さな摩擦を積み重ねる行為です。こうした動きが毎日のように繰り返されることで、表面の繊維が少しずつ浮き上がり、次第に丸い毛玉へと成長していきます。
ここで大切なのが、繊維の強さとしなやかさです。
繊維は種類によって強度・太さ・柔軟性が異なり、それらの組み合わせが毛玉の発生しやすさを左右します。特に、繊維が“どれだけ折れやすいか・切れやすいか”も毛玉に深く関係しています。
- 天然繊維（ウール・カシミヤなど） は柔らかく弾力があるため、毛玉ができても自然にちぎれて落ちることがあります。これは繊維がしなやかに動き、過度に絡まり続けないためです。毛玉ができても比較的小さく、ブラッシングでふんわりと整えやすいのが利点です。
- 合成繊維（ポリエステル・アクリルなど） は非常に強く切れにくいため、一度できた毛玉が繊維にしっかり残りやすい特徴があります。繊維同士が強く絡み合い、硬く大きな毛玉になりやすいため、むしり取ると生地を傷めてしまうことも多いです。
さらに言えば、同じ素材でも“糸の撚り方”や“織り方・編み方”によって毛玉の出方が変わることもあります。撚りの甘い糸や、ふっくらした編み目のものは繊維が動きやすく、毛玉が発生しやすい傾向があるのです。
つまり、「丈夫な繊維＝毛玉ができにくい」ではないということ。むしろ丈夫すぎる繊維のほうが、毛玉がしぶとく残り、見た目の劣化が目立ちやすくなることもあります。
ここが、毛玉ケアの難しさであり、同時に素材を知る面白さでもあるのです。
毛玉になりにくい素材ランキング
ここからは、繊維の性質だけでなく“実際の着用感”もふまえた総合ランキングを紹介します。
あなたの服選びの指針になるはずです。
第1位：コットン（綿）・シルク・リネン
植物繊維・動物繊維の中でも、もともと毛玉ができにくい優秀素材です。
繊維が長く強いため、摩擦が起きても毛羽立ちにくい特徴があります。
さらに、これらの素材は吸湿性や通気性にも優れており、季節を問わず快適に着られる点も魅力です。特にコットンは肌にやさしく、デイリーウェアとして取り入れやすいため「毛玉に悩みたくない人」の強い味方。シルクは見た目の上品さだけでなく、摩擦に強い特性を持ち、インナーとして取り入れることで外側の衣類の毛玉予防にもつながります。リネンは繊維がとても強く、使うほどに柔らかく育っていくため、長く愛用できる素材として人気です。
冬でもコットンニットやシルク混インナーを選ぶことで、毛玉ストレスが大幅に軽減できます。特に肌着をシルクに変えるだけで、上に重ねるニットの摩擦が減り、結果として毛玉ができにくくなるという“相乗効果”も期待できます。
第2位：ハイゲージ（目の細かい）ウール・カシミヤ
ウールやカシミヤは動物性繊維で毛玉になりやすい印象がありますが、編み目の細さが重要です。ハイゲージ（細かい編み目）だと、繊維の動きが抑えられ毛玉ができにくくなります。
また、ハイゲージのニットは生地表面が滑らかで、バッグのショルダーやコートとの摩擦にも比較的強いというメリットがあります。同じウールでもローゲージ（ざっくり編み）のものと比べると、毛玉の発生率は大きく変わります。
さらに、良質なウールやカシミヤは繊維自体がしなやかで、毛玉ができても“ほぐれやすい”という特徴があります。ブラシで軽く整えるだけで元の美しさに戻るのも魅力です。丁寧に扱えば長年愛用できる、まさに“育てる楽しさ”のある素材です。
第3位：抗ピリング加工の合成繊維
ポリエステルやアクリルなどの合成繊維を選ぶなら、抗ピリング加工が施されているかどうかが重要です。最近は技術が進化しており、繊維の表面を滑らかにしたり、絡まっても自然に落ちやすく調整したファブリックが増えています。
抗ピリング加工は、合成繊維にありがちな「硬くて大きな毛玉が残り続ける」という弱点を補ってくれる優秀な加工です。通勤服や普段使いのトップスなど、毎日たくさん着るアイテムほど恩恵を感じやすいでしょう。
さらに、同じ合成繊維でも“糸の太さ”や“編み方”によって毛玉の出方が変わります。細い糸を使った滑らかな生地を選ぶと、毛玉ができにくく見た目も美しく保てます。
洋服のタグに「抗ピリング」「毛玉防止」と書かれているものを選ぶのがポイントです。慌ただしい日常の中でも気兼ねなく着られる、頼れる選択肢といえます。
要注意！毛玉ができやすい素材・選び方
ここからは、毛玉ができやすい“落とし穴”を紹介します。
避けるべきポイントを知ることで、毛玉の悩みはぐっと減ります。
× 混紡素材（ウール×アクリルなど）は慎重に
混紡素材は扱いやすく価格も手頃で、見た目にも可愛いものが多いのですが、毛玉ができやすい組み合わせが存在します。とくにアクリルは繊維が強く、弾力があまりないため、柔らかいウールの繊維を巻き込むように絡め取り、大きく固まりやすい毛玉を作ってしまいます。ウールだけで編まれたニットよりも、アクリル混の方が“ゴロッとした毛玉が残り続ける”という経験をしたことがある人も多いのではないでしょうか。
さらに、混紡素材は「どの素材が表面に出ているか」によっても毛玉の出方が変わります。表面にアクリルが多く出る糸構造になっている場合、スレに強い反面、できた毛玉がしぶとく残りやすく、むしろ見た目が悪くなってしまうこともあります。
逆に、ウールが表面に出る場合は毛玉自体はできやすいものの、ブラッシングで比較的取りやすいという特徴もあります。
混紡素材を選ぶときは、比率が低いものや、表面が滑らかな生地を選ぶと安心です。また、糸がふっくらしているものよりも、ややハイゲージ寄りで密度のある編み地の方が毛玉リスクを抑えやすいため、できれば現物を触って糸の動きやすさをチェックすると失敗しにくくなります。
× 「ふんわり・ざっくり」は毛玉の温床
見た目の可愛さや“柔らかい雰囲気”を演出してくれるニットは魅力的ですが、毛玉のリスクという点では少し注意が必要です。以下のような質感のものは、繊維同士が動きやすく、引っかかりや絡まりが起きやすい構造になっています。
- ブークレ素材（輪っか状の糸）
- ローゲージニット（ざっくり編み）
- 起毛加工（シャギーなど）
- ふわふわとした空気を含むタイプのモヘア混素材
これらは糸が立ち上がりやすく、風合いとしてはとても可愛いのですが、そのぶん摩擦の影響も受けやすくなります。たとえば、バッグのショルダー部分や通勤時のコートとのこすれなど、日常のごく自然な動作だけで毛玉の原因が積み重なってしまうのです。
ただし、“可愛いから着たい”という気持ちはとてもよくわかりますし、毛玉ができやすいからといって避ける必要はありません。大切なのは、毛玉ができる前提でこまめにケアする準備をしておくことです。洋服ブラシで週に数回整えるだけでも毛玉の発生を遅らせられますし、外出時には摩擦の多いバッグのショルダーを変えるなど、ちょっとした工夫でも長持ちに繋がります。
ふんわり・ざっくりの可愛いアイテムは、ケアさえ味方につければ十分長く楽しめます。お気に入りを大事に育てる気持ちで、ケア用品をセットで用意しておくことをおすすめします。
プロの裏ワザ：店頭でできる「こすりテスト」
買う前に袖口や内側などの目立たない部分を、生地同士でそっと軽くこすってみましょう。これだけで“繊維同士がどれくらい動きやすいか”が簡単に確認できます。特に、糸が浮きやすいものや、表面の繊維がゆるく編まれているものは、摩擦が加わった瞬間に繊維が立ち上がりやすく、すぐに毛玉へと発展する性質があります。
こすったときに、うっすらと毛羽が立つ程度なら問題ありませんが、繊維がポワッと広がるように浮き上がる場合は、毛玉ができやすいサインです。また、こすったときに静電気が発生する素材は、ホコリや細かい繊維が付着しやすく、結果的に毛玉を成長させやすい傾向があります。
このテストは数秒でできるのに、とても精度が高く、プロのバイヤーも実際に使っている方法です。生地の“表面の強さ”をその場で見極められるため、失敗しないお買い物につながります。
※必ず“ごく狭い範囲で、そっと、控えめに”行ってくださいね。お店の方への配慮を忘れずに！
毛玉を防ぐホームケア
毛玉は日常のケアで大きく減らすことができます。そして一度コツをつかむと、特別な道具がなくても驚くほど効果が出やすいのがホームケアの良いところです。
たとえば「洗濯前のひと手間」や「収納時の工夫」など、小さな習慣が積み重なることで、繊維の摩擦を大きく減らし、結果として毛玉の発生を遅らせることができます。また、素材の特性に合わせてケア方法を変えることで、服そのものの寿命もぐんと伸びます。
ここでは、今日から取り入れられる簡単な対策を紹介します。難しい技術は必要なく、思い立ったその日から実践できるものばかりなので、ぜひ気軽に試してみてくださいね。
洗濯で「避けたい」NG・ワースト3
- 裏返しにしない
- 洗濯ネットを使わない
- 他の衣類と絡めて洗う
これらは摩擦を増やし、毛玉の原因になります。とくにデリケートな素材は、洗濯機の中で他の衣類とぶつかるたびに細かい摩擦が生まれ、見えないレベルで繊維がささくれていきます。これが蓄積すると毛玉になるため、些細な習慣が大きな差につながります。
洗濯ではどうすればいいの？
毛玉を防ぎたい時は、避けるべきことを覚えるよりも、“どう洗えばいいか”を知る方がずっと楽で直感的です。そこで、上の否定形に対応する“推奨フォーム”を並べて紹介します。
✓ 裏返して洗う
→ 表面の摩擦を大幅に減らし、毛羽立ちを防ぎます。
✓ 洗濯ネットに入れる
→ 衣類同士のぶつかりを防ぎ、デリケートな毛織物を長持ちさせます。
✓ 同じ素材・軽さの衣類と一緒に洗う
→ 重さや硬さの違いによる摩擦ダメージを軽減できます。
ぜひ”こうすると良い”という視点で洗濯習慣を整えてみてくださいね。
必ず 裏返してネットに入れる 習慣をつけましょう。裏返すことで「表面の毛羽立ち」を防ぎ、ネットが衣類同士の衝撃を吸収してくれるた め、摩擦が大幅に減ります。また、柔軟剤を使うと繊維の滑りがよくなり、摩擦軽減に一役買ってくれる場合もあります。ただし、ウールなど一部の素材は柔軟剤との相性が微妙なこともあるため、製品表示をチェックするのがおすすめです。
素材別の正しい洗い方
- ウール・カシミヤ： 中性洗剤でやさしい押し洗い。熱いお湯は縮みやフェルト化の原因になるため、必ず30℃以下のぬるま湯で洗います。脱水は短時間にし、タオルドライで余分な水を吸い取ると型崩れしにくくなります。さらに、洗う前に軽くブラッシングして表面のほこりを落としておくと、繊維同士の絡まりを防げて毛玉予防に効果的です。また、保管時はハンガーよりも畳んで収納することで、重力による伸びや摩擦を軽減できます。
- ポリエステル・ナイロン： 丈夫だがネットを使うと安心。速乾性が高いため、洗濯後は早めに取り出すとシワを防ぐことができます。静電気がこもりやすいので、気になる場合は柔軟剤も有効です。特に冬場は静電気によって細かい繊維や埃が付着し、それが毛玉のもとになることがあるため、柔軟剤や静電気防止スプレーを併用すると安心です。また、乾燥機に入れると熱で硬化し、毛玉ができた場合に落ちにくくなることもあるため自然乾燥がおすすめです。
さらに、乾燥機の使用には注意が必要です。高温の回転によって繊維がこすれ合い、毛玉だけでなく縮みや型崩れの原因にもなります。できるだけ自然乾燥を選び、平干しできる衣類は平干しにすると安心です。特にウールやカシミヤは干し方ひとつで風合いが左右されるため、タオルの上に置く“平干し”が最もダメージを抑えられます。乾燥中に手でやさしく形を整えることで、仕上がりが美しくなるのも嬉しいポイントです。
普段の生活で気をつけたいポイント
■ 外出中に起きやすい摩擦ポイント
バッグのショルダー部分や、机の角にこすれる場所は毛玉の温床です。歩くたびに布が擦れ続けるため、どうしても摩擦が蓄積しやすくなります。また、デスクワーク中の腕とデスクの摩擦、電車の座席にもたれることで起きる背中の摩擦など、日常の何気ない所作が毛玉の原因になることもあります。
■ 家の中にも潜む「見落としがちな摩擦」
これに加えて、家の中でも毛玉の原因は意外と潜んでいます。例えば、ソファやクッションとのこすれ、バッグの持ち手が繊維に繰り返し触れること、さらには上着の内側の素材との摩擦など、見落としがちなポイントがたくさんあります。これらは日常的な動作の中で自然と起こるため、完全に避けることは難しいですが、“意識するだけ”でかなりの予防効果があります。
■ 今すぐできる摩擦対策
- バッグのショルダーが服に当たりにくい位置に調整する
- デスクワーク時はカーディガンを脱いで摩擦を減らす
- 座席にもたれるときは背中の摩擦を意識する
- 外出後は洋服ブラシで軽く整えて毛流れをリセット
■ 習慣化がいちばん効くケア
少し意識するだけで、毛玉の発生を大きく抑えることができます。バッグのショルダーを生地に触れにくい位置に調整したり、デスクワーク時にはカーディガンを脱ぐなどの工夫が効果的です。さらに、帰宅後に洋服ブラシで軽く毛流れを整える習慣を取り入れると、繊維の乱れが抑えられ、毛玉の進行を防げます。小さな習慣の積み重ねで、お気に入りの服をより長く美しく保つことができます。
毛玉ができてしまった時の対処法
毛玉はできてしまっても大丈夫。むしろ、丁寧にケアをすれば“お気に入りをもっと長く楽しむチャンス”にもなります。大切なのは、正しい方法で取ることです。毛玉を無理に引っ張ったり、勢いよくむしり取ると繊維そのものが傷ついてしまい、さらに毛羽立ちやすい状態になってしまいます。逆に、適切な手順と道具を使えば、生地を傷めずにきれいに整えられ、風合いまでよみがえることもあります。
毛玉取り器・ブラシの使い分け
毛玉ケアにはいくつかの道具がありますが、それぞれ得意分野が違います。正しく使い分けることで、生地への負担を最小限にしながら、驚くほどきれいに整えることができます。「とりあえず電動で削る」という使い方は、素材によっては生地を薄くしてしまうこともあるため、特性を知ったうえで選ぶのが安心です。
- 電動毛玉取り器： 手早く綺麗にできるのが最大の魅力。特にTシャツ・トレーナー・合成繊維のニットなど、比較的しっかりした素材とは相性が良いです。ただし“削る”力が強いため、柔らかいウールやカシミヤに使う場合は、「強く押し付けない」「一か所に当て続けない」などの注意が必要です。丸くなった大きめの毛玉には即効性がありますが、繊細な生地では慎重に扱いましょう。
- 洋服ブラシ： 天然繊維の風合いを守りながら整えるのに最適です。ブラシは“毛玉を削る”のではなく、“絡まった繊維をほぐして整える”という役割のため、生地を痩せさせずふんわりとした質感をキープできます。着用後にサッとブラッシングするだけでも毛玉の進行を遅らせられ、ホコリ落としとしても優秀です。特にカシミヤや上質ウールとは相性抜群です。
また、最近では毛玉取りスポンジや手動タイプの毛玉カッターなどもあり、襟元や袖口など細かい部分に使いやすいアイテムも増えています。服の種類や毛玉の状態に合わせてツールを使い分けることで、生地の負担を減らしながら効率よくケアできます。
プロに任せるべきアイテム
カシミヤなど高級素材は、無理せずプロのクリーニングに任せるのも賢い方法です。特に、繊維が繊細で一度傷むと元に戻りにくいアイテムは、プロの“仕上げブラシ”や“蒸気仕上げ”によってふんわりとした質感が復活することもあります。自宅でのケアに不安がある場合は、無理をせず専門家に委ねることで、長く美しい状態をキープできます。
まとめ：素材を知れば、おしゃれはもっと楽しくなる
毛玉は避けられないものですが、素材選びと丁寧なケアで大きく減らせます。
天然繊維が好きな私たちにとって、毛玉との向き合い方はとても大切です。
今回のランキングを参考に、ぜひあなたの”お気に入りを長く愛せる一着”に出会ってくださいね。
